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空を歩く

エンジェル・フライ*6〜ドーナツ*

「わたしはあのピンク色のチョコののったやつね。」
フラウのいうそれと、自分のとをトレイにのせて
ほおづえをついてニコニコ手を振って待っているフラウのところへ運んだ。
「あっ、やだ、それもいい!半分コする?」
マオの選んだブラウンシュガーのドーナツにも狂喜している。
(わっかだからかな?こんなにはしゃぐの・・)
マオはあきれながらフラウに聞いた。
「天使、もの、食べるの?」
マオの了解を得る前にすでに手を伸ばしたブラウンシュガーにまみれながら、
フラウは我に返ったようだった。
「ごめん。ドーナツってだめなんだ。昔アメリカの田舎で小さな家のママが作ってるの初めて見て、その家があまりにしあわせに満ちてたもんだから・・。その家は貧しくてパパも病気だったけど、子供達もパパもママもとてもしあわせだったよ。天使はしあわせに弱いんだ。ものを食べてるんじゃなくて、しあわせの記憶を食べてるの。」
「へ〜え。しあわせの記憶かあ・・。」
「フランはサイダーとゼリーが好きだよ。」
「やっぱりしあわせの記憶?」
「そうね。」
そういってドーナツをほおばるフラウの顏はほんとにうれしそうな小さな少女のようだった。
マオは久しぶりにそんなささやかなしあわせを思い出した。

「マオ!」
背中をぽんとたたかれた。
「ともだち?」
ヤエやサヤカたちがドーナツの乗ったトレイを持って立っていた。
「ああ、と、ともだち。」
「ハーフ?」
「う、うん。そんな感じ・・。」
フラウはドーナツを持ったままゴールデンスマイルを浮かべた。
みんなつられて笑った。
彼女たちは空いている奥の席へと向かっていった。
フラウは無邪気な満面の笑みで手を振り続けた。
みんな振り返りながら笑い続けた。

「驚いた。」
「なにが?」
「サヤカたちがあんな笑顔をしてるよ。」
「笑顔はうつるんだよ。しあわせはうつるんだよ。無敵。赤ちゃんは無敵でしょ?赤ちゃんが笑う時って生きていることがただうれしいから。それを見た人、笑顔がうつるでしょ?無敵の時は敵意がないから、相手にはわかるんだよ。自分が嫌われてないって。」
「サヤカのこと嫌いじゃない?」
「あたりまえじゃない。人を嫌うのは人だけだよ。」
「えっ?そうなの?」
「人と人を分けるのも、しあわせとふしあわせを分けるのも、人がつくったゲームのルールだよ。ほんとはそんなルールどこにもないけど。だからユニークだよね。おもしろいよね、人って。ジブンでふしあわせをつくって嘆いているんだよ。」
ほんとうに可笑しそうに、でもちょっと切なそうにフラウは笑った。

To be continued…
by ben-chicchan | 2006-02-11 13:05 | story
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