空を歩く

さよなら地球 〜爽太〜

「ばあちゃん、ほんとうに終わるんだね?」
「ああ、そうらしいね。」
「なにもかも?」
「そうさ。」
「あしたには?すべて?」
 ばあちゃんはもうなにも言わずに夕焼けをみた。
 爽太ももうなにも言えなかった。
 きのうから世界は崩壊を始めていた。
 たががはずれた。
 すべてをつなぎとめていたなにかがゆるんだんだ。
 これはほんとうのことなんだ。
 おとといまで明日を信じていた。まるで明日は永遠にあるかのように。
 答えないばあちゃんに向かってつぶやく。
「こんな日が来るってわかっていたら、あんなに人を傷つけるんじゃなかった・・。もう、あやまることもできない。」
「・・争うっていったいなんだったんだろう?この惑星(ほし)があったから戦争もしていられたんだ・・。」
「憎しみ合うことすらもうできなくなるんだね。」
「ばあちゃん、」
 爽太はそっと手をのばした。
「手、つないでていい?」
 ばあちゃんはうなずいて細い手首をさしだした。
「爽太、こんなことならお前も父さんや母さんといっしょに往っておきゃあよかったね。」
 爽太はすこし黙ると、首をふった。
「いいや。やっぱり生きててよかったよ。14年の人生だったけど、いろんな想いをすることができた。」
「そうかい?」
「楽しい想いもしたさ。しんどいこともあったけど。そりゃあ、もう少しいろいろ経験したかった。だけど、この地球上みんなこれから同じ体験をするんだ。これだけいっしょなら、こわいけどこころづよくもあるってもんさ。」
 ばあちゃんはかるく笑った。
「おまえは思ったより強い子だったんだねえ。大人も嘆き哀しんでこわがっているっていうのに。」
「アバローがね、言ったんだ。いっしょについててやるから大丈夫だって。」
「だれだい?それ?」
「あ、言わなかったけど、時々僕に会いに来るおじさんでどうも僕のことよく知ってるみたいなんだ。」
「どんな人?」
「なんだか白い衣をからだに巻き付けたほっそりしたひと。ほら、あんな感じの。」
 そういって仏壇の観音様をさした。
 ばあちゃんは一瞬だまって
「おまえ、今あばろうといったかい?」
「うん?」
「それは、あばろうきてしゅばらと言わなかったかい?」
「あ、そんな感じ。でも長くて覚えらんなかったから、アバローって呼んでる。」
「あほ、それは観音様じゃ。」
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by ben-chicchan | 2006-04-02 22:28 | story
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