空を歩く

ハーティ & ダーティ 〜3〜

 ベンチのそばにはゴミばこがありました。
 ゴミばこにはときどきカラスがおりてきてゴミをあさります。
 ばさっばさっとはばたきのおとがして、カラスが1羽まいおりました。
 ゴミばこにとまったまま、ベンチのほうを見ています。
「やあ。」
 はじめはそれがじぶんにかけられたことばだとは気がつかずに、ダーティはひろばのほうを見つめていました。
「やあ。」
 もういちどえんりょがちにかけられた声にダーティははじめてふりむきました。
「もう、何日もひとりでそこにいるけど、どうしたんだい?なにかたべたかい?」
 ダーティは目をまるくしてその声のぬしを見つめました。
「オレに声をかけてるのか?」
「きみのほかにだれがいるんだそこに?」
「・・。」
「たべてないだろう?見てたんだ。ずっと上から。」
 そういってハーティはゴミばこからあさったパンくずをくわえてベンチへはばたきました。
 とばされそうないきおいのカラスのはばたきに、ダーティは目をつぶりました。
「よるなよ。オレはいまはけんかする元気がないんだ。」
「けんか?なんで?」
「カラスはハトをおっかけるもんだ。ハトはカラスにはかなわない。」
「そんなこと気にするなよ。さあ、たべな。」
 そういってダーティのまえにパンくずをおきます。
「ハーティっていうんだ。」
「・・オレはダーティ。」
 ダーティは目のまえのパンくずを見つめました。
「どうしてオレにこんなことをするんだ。」
「だってはらがへったらつらいだろう?」
「カラスがこんなことするなんておもわなかった。」
「ハーティってよんでくれていいんだ。」
 ダーティはなんだか気がゆるんで足をたたんでそこにすわりこみました。
「10日ぶりにしゃべったよ。」
「ひもじかったろう?」
「うん。」
「わかるよ。」
 ダーティはハーティのほうをふりかえりました。
「たべものがのどをとおらないくらい、むねがひもじかったんだ。」
 ダーティはびっくりして声が出ませんでした。
 どうしてこのカラスはじぶんのきもちがわかるんだろう?
「そういうことはあるさ。ぼくはしょっちゅうだ。」
「どうしてハーティはこんなふうにむねがいたかったりするんだ?」
「それは、まるでぼくなんかいないみたいにだれも口をきいてくれなかったり、じぶんのおもいがつたわらなかったりするからさ。」
 それをきいてダーティの目からなにかがこぼれました。
「オレはブレンディにふりむいてほしかったんだ。みんなの中でいちばんになりたかった。だけど、さいていっていわれた。」
「そう。」
 ハーティはうなずいてきいています。
「オレはスノーやブラウニーやスカーをいじめた。だからきらわれてもしかたがないんだ。」
「・・。」
「もう、だれもオレのことをふりむいてくれない。オレはさいていなんだ。」
 ハーティはこたえませんでした。
 そのかわりにパンくずをそっとそのくちばしでダーティのほうへおしやりました。
「たべなよ。」
 ダーティはなきました。
「なんでそんなこというんだ。オレはさいていなんだ。」
「だってきみはつらいんだろう?つらいとりはなぐさめられなくちゃ。」
「ばかだなあ、オレはわるいことをしたんだからなぐさめられなくてもいいんだ。」
「だってほら、きみのむねはいたんでるじゃないか。ぼくはそのつらさよくしってる。だからほっておけないさ。」
「ばかだ。ハーティはばかだ。」
 そういってダーティはなきました。
「きみのはねにさわっていいかい?」
 ハーティがそういい、ダーティはなきながらうなずきました。
「きれいなはねだ。やわらかそうだね。」
 そういってハーティはくちばしでそっとまるでわたげにさわるようにダーティのはねをなでました。
「たべるんだよ。むねがいたいのはきみだけじゃない。」
 そういってハーティはとびたちました。
 ダーティはむねがいっぱいになってパンくずをたべることができませんでした。

 To be continued ‥
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by ben-chicchan | 2007-06-01 14:44 | story
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