空を歩く

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エンジェル・フライ*8〜出会い*

 街には少し高台の地形があった。
 想いに引かれるようにそこに出た。駅前の高層ビルの手前の、道路の上をまたぐ橋のところまで来てマオは足を止めた。
 フラウが言った。
「ああ、あの空はいいね・・。ここじゃないところでも見たね。」
「ウン。」
 フランのささやかなうなずきも感じた。
 そういわれれば、そんな気がマオもした。
「違う星でってこと?」
「はるかな別のときと場所で。」
「たぶんマオも見てるんだよ。その頃ね。」
「もしかして、フラウやフランと会ったのははじめてじゃないの?」
「出会いなんてのはそういうもんさ。思い出せないくらい前かもしれなくても、そんなもんさ。」
 フランはそう言って飛んだような気がした。
 フラウはまだかたわらにいて少し思い入れるように橋の下を眺めていた。
「ひとがぱらぱらいるね。この星のひとが。」
「他の星もなつかしい?」
「ううん。いつでも行けるもの。」
 そういって振り返ってきんぽうげのように笑うと、黄金色の光がまたたいた。
 そしてフラウも飛んだ。

 天使を見送ってマオはじんじんとしみるような天使時間の余韻を味わいながら、階段を降りていった。
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by ben-chicchan | 2006-03-05 09:20 | story

エンジェル・フライ*7〜天使時間*

 マオは自分の街にもどってきた。フラウと歩きながらふと、気づいた。
 耳の底がしんとするくらいの街の静けさに。ごくごくそれはありふれた日暮れかけたひととき。街はまるで正月の朝のように平けく静まり返っている。
 肩にかけたカバンをしょい直しながらその『静かな音』に耳を澄ませた。
 あ、
 と、思った。
 これが、”平和の音”なのだ。
 この家に、あの家に夕餉の支度が整えられ、新聞配達のバイクが通る。
 猫がのっそりと筆を立てるようにしっぽを立て、なんの心配もないように道を渡っていく。
 ふいにこみ上げる想いに襲われてマオは自分でも驚いた。
 フラウが気づいて顏をのぞいた。
「どうしたの?」
「フラウ、これって・・。これっていうのがね・・・平和なんだ、と想ったの。そしたら世界のどこかで明日を想えない人がいるってことを逆に急に強く感じた。ものすごくせつないこと。それって。ほんっとうに胸の底の方をきゅうんとしぼられるようなしーんとせつないこと。深ーく透き通った黄緑色のレモン汁みたいにせつない。平和の中にいると、まったくこの音に気づかないのよね。」
「音?」
「ほら、聞いて。なんて静かなんだろう。」
「・・。ああ・・。うん。」
「うっ・・。」
 道端で不覚にも嗚咽がもれた。
 背中にあたたかいフラウの手のひらを感じた。
「この静けさがすべての人の上にあったなら・・。そうでなきゃいけない。ほんとは。そうじゃない?」
「うん。そうだね。」
「そうさ。」
 フランの声もした。
「マオ、天使時間がひらいているね。フラウに触れ過ぎたんだ。」
 フランのあのグリーンの声がつづく。
「天使時間ってなに?」
 顔をぬぐいながらコドモのようにきいた。
「天使に通じてしまう瞬間のコト。どんなに遠くにいても天使にはそれがわかって瞬時にそばに引き寄せられる。こんな風に。」
「ふーん・・。」
 なにを言われているのかはよく分かっていなかった。
 ただ、マオはその時真っ平らな天のくにの音を聞いていたのだ。
「ああ、そういえば天使がいてもおかしくないような空だ・・。」
 そういって泣き笑いした。

To be continued…
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by ben-chicchan | 2006-03-04 21:31 | story