サワジイはいっしょにいるとだれでもぽかぽかとあったかくなって、別れる時はみんな笑顔になってしまうふしぎなおばさんで、ウラの村でざっか屋をやっています。
パップー君はサワジイがだいすきです。
村のまんなかの大通りのほぼまんなかへんにサワジイの店はあります。いつも人だかりがしているのですぐわかります。大きなおなかのおじさんのあいだをすりぬけて入ると、いつものようにサワジイの大きな笑い声が店にひびいていました。
サワジイはおいしゃさんではないのですが、人の顔色がよくわかってなにをたべたら、なにをしたらよくなるかとてもよくしっていました。
パップー君が入ってきたとたん、サワジイは大笑いをやめました。
「あれあれ、月割り草がしおれたみたいだ。なんかあったかね?」
パップー君はほっとしました。やっぱりサワジイはたよりになる。
あったかいお茶をだしてもらうと、パップー君はサワジイに口をひらきました。
「ぼくがせわしてる牛が、プナンのとこのすえっ子のイオをつのでついてけがさせちゃったんだ。プナンはぼくのせいだってこわいかおしてどなりこんできて、かあさんもおんなじにおこった。でもぼくはとめようとしたんだ。イオがぼくの牛をはやしたんだ。それでほんとはおしおきに牛小屋にとじこめられてたのをこっそりぬけだしてきちゃったんだ。」
まじめなかおになってきいていたサワジイは、大きくうなずいてものすごくたっぷりにっこりしました。そうなんだ。これでいつもなんだかだいじょうぶって気になってきちゃうんだ。
「あんたにいちばんいい方法をおしえてやるさ。」
にっこりでもうずいぶんこころがかるくなっていたパップー君は思わず身をのりだしました。
「あんたをいちばん好いてくれる木をおさがし。」
「木?」
「どうやったらそれがぼくを好きだってわかる?」
「そんなのかんたんさあ。よんでるからね。」
「よばれるの?」
「そっちへいきたくってしかたのなくなる木がそれだ。」
「ああ。」
「そしたらね、その木のりんかくをていねいになぞってごらん。」
「なぞる?」
「そう、目でなぞる。そうするとその木にとても入りやすくなる。」
「入るの?」
「べつにあなをあけて入れというんじゃない。きもちだよ。そうしたきゃ、だきついたっていい。」
「そうすると?」
「してみたらいいさ。それがあんたの方法だ。」
それだけいうともう、サワジイはおとなたちの方へむきなおって大きな声でまたしゃべりだしていました。だけど、その前にとびきり大きなウインクをのこしてくれたので、もうなにもきかなくてもいいような気がしました。